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1 ある日突然税務署から調査官が・・・

2 美容整形医院にマルサが、仮名預金の行方は?

3 大山鳴動ネズミ?匹

4 誰にも知られず死んでいく、税務調査官も人の子

5 レジにさわるな!

6 亡くなった母の税金を・・・?

7 シンデレラおじさんのストー
リー

8 頑固オヤジのおかげで・・・

8-2 頑固オヤジのおかげで・・
・・・part2

税務調査あれこれ/以外にしらないあれやこれ

4 誰にも知られず死んでいく、税務調査官も人の子

 良人善太(ヨシト ゼンタ)氏は、中部のアメリカ軍基地の近くで15室のアパートの経営とアメリカ軍の基地に用地を提供している、いわゆる軍用地地主でもある。
75才のいかにも人の良さそうな感じの人で、いつもニコニコしている、まさに典型的なオジィである。
その好好爺の不動産所得について、税務調査したいとの連絡が、古武良税理士へ正直一本調査官から電話連絡があった。

正直一本調査官 「良人善太さんの調査を行ないたいのですが、おそらく半日で終わると思いますのでよろしくお願いします。」

古武良税理士 「う〜ん。それはかまいませんけど、良人さんはたかだか15室のアパートと軍用地料収入しかない納税者ですが、何を調査するのですが?」

正直一本調査官 「それは調査の日に申し上げますから。」

一般的に個人の税務調査は、事業所得や譲渡所得に多く、不動産所得の税務調査は古武良税理士が税理士事務所を
開業して28年になるが、その間5件位しかなく、その調査理由が全くわからなかった。
アパートの家賃収入は借主に聞けばすぐに判明することだし、軍用地料は防衛施設局から税務署へ支払明細書が送られるので、収入もれなどあり得ない。
古武良税理士は調査理由が不明な点について一抹の不安があったが、チャーガナナイサ(何とかなるさ)の気持ちで調査に臨んだ。
さて調査当日は、良人善太氏の住宅に正直調査官が臨場した。
住宅は一階で隣の建物がアパートである。
正直調査官と良人善太氏、それに古武良税理士が型通りの挨拶をしていると、良人氏の奥さんがお茶を運んできた。
奥さんは足が悪いらしく、お茶を出すとすぐにイスにかけて、

奥さん 「すみません。リウマチで足が曲がらなくて畳には座れませんので、イスにかけさせてください。」

正直一本調査官 「奥さん、きつければ隣の部屋でどうぞ休まれていてください。」

その後一時間位アパートの家賃収入や軍用地料明細とか、経費の領収書を確認していた正直調査官が切り出した。

正直一本調査官 「良人さん、去年の申告書で修繕費として80万円計上してますね。領収書を確認したらこの80万円は階段を改修し、バリアフリーにしたとの内容ですけど、この部分は奥さんのために住宅の階段を改修したのではないですか?もしそうであればこの80万は経費にはならないですよ。」

この言葉に古武良氏はピンと来た。
確定申告書の収支計算書の修繕費の内訳に階段部分の改修費として80万円と記載したことを思い出したのである。
アパート部分の修理とは思っていても内心は不安になった。
良人氏は正直調査官に言った。

良人善太氏 「正直一本さん、実は80万円はアパートの修理で間違いありません。というのは、去年の春頃ある青年が私のアパートに入居したいとの申込みがありまして・・・」

良人善太氏の話の内容は、身体障害者の20才位の若者が授産施設の方とアパートの入居申込みに訪れたとのこと。
事情を聞いてみると、その若者は生まれつき脳性マヒであり、母親はこの子が10才の時に家出し、その後たてつづけに父親も家から出て行ったそうである。
 この子を育てるのが大変なのか、あるいは障害者の子を恥と思ったのか、結局、両親から見捨てられてしまったのである。それを不憫に思った叔父が、この子を障害者学園に通わせ、卒業させて今の授産施設に入所させたのである。
それから、20才の今まで叔父と同居していたが、この若者が叔父にこれ以上迷惑はかけられないと、一人暮らしをする為に良人善太氏のアパートに入居申込みをしたのである。
良人善太氏はこの若者の話にひじょうに感銘を受け、すぐに若者を入居させるために階段をバリアフリーに改造した。
それが問題の80万円なのである。
その後、その若者はこのアパートから授産施設に通っていて、叔父も週に一度くらい若者の様子を見に来ていた。
しかし、ある日、授産施設の方から叔父に電話があり、この若者が出勤していないので様子を見てくれないかとの連絡であった。
叔父がアパートの彼の部屋たずねてみると、この若者はすでに死亡しており、死後3日もたっていた。
死臭もしていて、警察の解剖所見によると病死ということであった。
古武良氏は良人氏の切々とした話を聞きながら、彼は何の為に生まれてきたのか・・・と、胸のつぶれる思いで目をつぶり、涙をこらえていた。
目をあけてしまうと涙がこぼれそうであった。
正直調査官も、その間ひとことも言葉をはさむことなく、じっと話に聞き入っていた。
”人間は生まれながらに平等である”と誰かが言ったがこれはウソだ。古武良氏は思った。
生まれてすぐに死ぬ人もいるし、100才まで健康で生きる人もいる。
彼のように障害をもって生まれ、両親に捨てられ、それでも精一杯生きているにもかかわらず、誰にも看取られずに20才で孤独死するとは・・・彼は何のために生まれてきたのか・・・?
古武良税理士はやるせない思いで胸が一杯だった。
このような社会的弱者を救うのが政府であり、そのための税金ではないか。我々国民はもっと税金の使途を監視しなければいけないと思う。

ほどなく正直調査官が切り出した。

正直一本調査官 「わかりました。バリアフリーの部分はどうなっていますか。」

良人善太氏 「バリアフリーを見ると、あの若者を思い出して悲しくなるので、今年になって撤去しました。」

正直一本調査官 「よくわかりました。本来は資本的支出と思いますが、翌年には除去していますのでこの件は修繕費として是認して今年の調査は終わりにしましょう。」

そう言う正直調査官の目もうっすら涙がにじんでいた。
税務調査官はどのような事情であれ、税法通りに税務行政を執行するのが使命という教育を受けているが、感情は少々表した方が人間らしいだろう。

古武良税理士の独り言 「税金は社会的弱者のために、もっと使われるべきだなぁー、、、(;_;)」



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