|
|
 |
5 レジにさわるな! 
「ごめんください。税務署ですが、帳簿指導にきました」
健康食品のスーパーに、ある朝の10時頃、連絡もなしに突然、税務調査官が来店した。
その日は、社長の栗栖氏と経理担当者の社長の妻が不在であった。
店員がその旨を言うと、調査官は店内を不満そうにグルリと見て回って翌日来ますと帰った。
その日の夕方、社長からの電話でこの件を聞いた古武良税理士は、”帳簿の指導とは何なのか?”とか
”今頃臨戸調査はしていない”とあれこれ思いながら、明日の調査に立会う事を社長に伝えた。
このスーパーは、栗栖氏の個人事業で、店主は敬虔なクリスチャンであり、帳簿も完全に記帳していて
栗栖氏のクリスチャンとしての立場や本人の性格上も不正はあり得なかった。
翌日10時きっかりに税務調査官は来店した。
調査官は若くはないが、古武良税理士は初対面であった。
古武良税理士は大体の調査官とは調査立会い等を通して面識があったが、この調査官は他局からの
出向なのかと思った。
渋井調査官 「税務署の渋井です。今日は帳簿の確認に伺いました。」
古武良税理士 「渋井調査官、今日は確認というと、何の確認ですか?通常の税務調査ですか?」
渋井調査官 「・・・そうですね。ウ〜ン、通常の調査です。」
古武良税理士 「税務調査であれば、本人か税理士に事前に連絡してもらえませんか?我々もいろ
いろと予定がありますので、いきなり来られても困りますよ。」
渋井調査官はそれには答えずに、調査を開始した。
まずこの業界の概況とか、取引先とかの聞き取りをして次に、帳簿を見せて欲しいとの事で、一時間く
らいをかけて一通りの帳簿や給与台帳などの調査確認をした。
11時半頃、渋井調査官は、立ち上がり店内をグルグル見回りながら、レジの前で立ち止まると言った。
渋井調査官 「レジの中を見せて下さい。」
古武良税理士 「エッ?レジの中を見たいって!?」
渋井調査官 「はい、そうですけど・・・」
古武良税理士が思わず大声になったので、渋井調査官はいぶかしそうに返答した。
古武良税理士 「何のためにレジの中を見るのですか?」
渋井調査官 「今日現在の現金残と、現金出納帳が一致しているかの確認ですよ。私は他局におり
ましたけど、そこではレジの中の確認は通常やってましたが・・・」
古武良税理士 「他局の調査方法は関係ないでしょう?調査対象は前年分以前でしょう、本年分は
来年の確定申告で適正に申告します。それでその申告の内容に疑問があれば、来年
以後に調査すればいいのではないですか。」
古武良税理士がだんだんと大声になってきたので、経理担当の奥さんが、思わず言った。
奥さん 「先生、いいですよ。別に見せても何ともないですから、見せましょう。」
古武良税理士 「いや、奥さん、きちんと一致しているのはわかりますけど、そういう問題ではないです。
いいですか?お客さんが来店して、この状況を見ると何と思われますか?
それに現金を手に取って誰が数えるのですか?みっともないですよ。」
それでも、渋井調査官は何やらブツブツつぶやいていたが???薜????????と?
???謔?、
渋井調査官 「わかりました。レジは見ないでよろしいです。」
それから再びテーブルに戻り、領収書綴りなどを確認していたが、やがて正午ごろになると
渋井調査官 「今日は一応これで調査は終わります。次回については後日連絡します。」
こう言って正午きっかりに帰って行った。
栗栖氏 「先生、レジまで見たいなんて言ってましたけど、何があるのですかねー 私、心配ですよ・・・」
古武良税理士 「栗栖さん、つねづね社長は不正申告は神の道に反するとおっしゃっていたでしょう。
こちらは適正に申告しているから何の心配もないですよ。」
調査官は、このスーパーが現金商売なので、売上を抜いているのではないかとの疑いで、事前通知なしに
来店し、レジの中まで見たいと言ったと思うが、栗栖夫妻は敬虔なクリスチャンで、しかも青色申告会の支部
役員もしていて、いつも適正申告の推奨を青色申告会の会員にも進言している以上、不正はありえないと
古武良税理士は自信があった。
栗栖氏はスーパーとしては、同業他社と比較し利益も高いし、所得も高すぎるほど申告しているのに、何の
理由で、こういうような調査になったのか判断に苦しんだ。
それから一週間後、渋井調査官から栗栖氏に電話があり「今回の調査はこれで終わり申告是認します。」
とのことであった。
古武良氏は税理士本人には最初からなしのつぶてであったことが大いに不満であったが、調査が半日で
終わり、申告是認とのことで”まぁーいいか”と納得した。
古武良税理士の独り言 「調査官は準備調査の段階で何か勘違いがあったのかな?」(^ム^)
レジとか引出しは、任意調査においては、税務調査官が勝手にさわれない。
納税者の協力を得て、納税者自身の手でなければ開けられないものである。
|
|