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1 ある日突然税務署から調査官が・・・

2 美容整形医院にマルサが、仮名預金の行方は?

3 大山鳴動ネズミ?匹

4 誰にも知られず死んでいく、税務調査官も人の子

5 レジにさわるな!

6 亡くなった母の税金を・・・?

7 シンデレラおじさんのストー
リー

8 頑固オヤジのおかげで・・・

8-2 頑固オヤジのおかげで・・
・・・part2

税務調査あれこれ/以外にしらないあれやこれ


 シンデレラおじさんのストーリー(7)


 ある日古武良税理士へ税務署の資産税部門の正直一本調査官から、税務調査の事前連絡があった。

正直調査官 「先生の関与された運賀良三氏の相続税の調査をしたいのですが・・・。」

運賀良三氏は3年前に子供がいない伯父から莫大な財産を一人で相続した現代版シンデレラおじさ
んである。この伯父は既に妻と死別し子がいなく、一人暮らしているのを運賀良三氏が、生活の面倒
を見ていて、伯父の兄弟の子が10名もいるなかで、全財産を運賀良三氏へ死因贈与であげる契約書
を公正証書にしてもらい、伯父の死亡後数億もの全財産を一人で相続でもらったものである。遺産
は不動産が1億円、預貯金が1億円で合計2億の財産であった。
おい、めいには遺留分の請求権がないので、遺言書のとおり全財産の相続ができたラッキーマンで
ある。
しかも相続税の基礎控除額が5,000万円+法定相続人1人当り1,000万円であるので5,000万+1,000
万×10名=1億5千万円の控除額が差引かれて相続税は、一親等以外が相続したことによる20%
加算も含めて、相続税はわずか600万円で済んだ。
それで運賀良三氏はたいそう喜んで、相続した1億円の預金の運用をどうするか悩んでいた。
 ところが相続税の申告後2年後に突然の税務調査である。
古武良税理士は、今回の調査は、預貯金の申告漏れではないかと直感した。
 というのは不動産の評価については、路線価が実際価格より、かなり下落していると思われたので、
路線価によらず、不動産鑑定士の鑑定評価で申告したので、不動産の評価には自信があった。
 調査当日の朝10時に正直調査官が一人で運賀良三氏の住宅へ来た。

正直調査官 「今日、運賀さんの相続税の申告の確認の調査に伺いました。」

まずは形通りの挨拶から始まった。そして調査官の質問の内容は、故人の亡くなった状況や、入院
した時期とか、入院期間とか、あるいは故人の趣味とか、世間話しと共に小一時間のやりとりがあっ
た。
11時頃になると正直調査官が突然切り出した。

正直調査官 「運賀さん、伯父さんの名義で青空銀行のひばり支店に普通預金はありませんでした?」
運賀良三氏 「エッ、青空銀行ひばり支店ですか・・・。う〜ん、思い出せませんね。なかったと思い
         ますよ。」
正直調査官 「あ、そうですか・・・。ほんとにありませんか。」
運賀良三氏 「急にそう言われましてね・・・。なかったと思いますが・・・。」

しかし、そう言いながら運賀良三氏の顔はどんどん青くなっていくのが、古武良税理士にもわかった。
つまり正直調査官は故人名義で預金の申告洩れを指摘していたのである。

正直調査官 「運賀さん、故人が亡くなる1年前に青空銀行のひばり支店の通帳に1億5千万円入金
         し ,同日全額引出されてましたけど、この通帳についてほんとに知らないのですか!」
正直一本調査官は多少声を荒げていた。

そして銀行から入手したであろう復元された通帳の写しを運賀良三氏に見せた。その通帳の写しを
古武良氏が見ると確かに伯父が亡くなる1年前の日付に定期預金が解約されこの通帳に1億5千万
円入金し、同日そっくり全額引出されていた。
古武良税理士は、これは相当マズイぞと思った。
運賀良三氏はしばらくボー然と黙っていたが、しばらくして青ざめたままの顔で言った。

運賀良三氏 「私に言われても、私は憶えてないですよ。伯父が勝手にやった事ではないですか。」
正直調査官 「そんなことはないでしょう。故人は亡くなる2年前も前から入院し、通帳に入出金
         した頃は病院から外出もできなかったのではないですか。そういう人がどうして銀
         行に行けるのですか。伯父さんの面倒を見ていたのは、運賀さんあなただったん
         でしょう。しかもそのころには既に全財産をもらう遺言書も書いてあったんでしょう。
         故人の預金を動かせるのは運賀さんあなたしかいなかったのですよね!」

運賀良三氏は正直一本調査官が、故人の入院した頃の状況や、亡くなった頃の様子などを世間話と
共に質問された意味がようやく判った。
それからは正直調査官が何を言っても運賀良三氏は青ざめて下をうつむいたまま黙ったままだった。
しばしの間の沈黙だったが、運賀良三氏には、長い時間がたったように感じられた。
息苦しいような沈黙のあと古武良税理士が口を開いた。

古武良税理士 「正直調査官、運賀さんは今頭が混乱しているみたいですので、私からこの通帳
           の件は確認して、調査官に連絡しますので、この場はこれで引き取ってもらえ
           ませんか。」
正直調査官 「判りました。この通帳の写しをメモして下さい。そしてこの件の確認は先生にまかせ
         ますので後日電話なりで、連絡願います。」
こう言って正直一本調査官が帰ったのは12時近くになっていた。

古武良税理士 「運賀さん、どうなんですか。この通帳は運賀さんが使ったのですか?」
運賀良三氏 「先生、実は伯父さんが余命いくばしかなかったので、伯父さんの意識がしっかりしてい
         る内に定期預金を解約し、正直調査官が言っていた通帳に一旦入金し同日全額引出
         しました。それにしても何で税務署がこの通帳の件が判ったのですかね?」
古武良税理士 「恐らくマルサからの資料だと思いますよ。金額が大きいだけに網にかかったので
           しょう。ところでこの預金通帳は今ありますか。」

運賀良三氏はしばらく考えていたが、別室に行き、すぐにこの通帳を持って古武良税理士へ手渡した。
古武良税理士がこの通帳を見ると既に解約されていたが、故人の名義の定期預金を合計1億5千万
円解約して、同日10口に分けて現金で引出されていた。
現金で引出されていたが、この行方が判明しないので、調査官は運賀良三氏に詰問していたので
ある。
その後、別の通帳を持ってこさせて、この通帳と付合わせたところ、現金で引出した1億5千万円の内
6千万円については申告済であり、残り9千万円についてはどうやら申告洩れになっていた。
9千万円についてさらに確認したところ、5,000万円は金融商品へ投資し、残り4,000万円は別の銀行へ各1,000万円づつ、運賀良三氏の家族名義で預金していた。
その結果預金の申告洩れは9,000万円と確認したので、古武良税理士は、この旨を正直調査官へ電話で伝えると、

正直調査官 「わかりました。ただもう少し確認したい事があるので、後日こちらから連絡しますので
         もう少し待って下さい。」

古武良税理士は、もう少し確認したいとの話しに少しひっかかりを感じながらも、早めに修正申告を提
出しようと思っていた。
それから1週間後、正直調査官から古武良税理士へ電話があった。

正直調査官 「先生、もう一度運賀氏の家へお邪魔したいのですが。」
古武良税理士はもう9,000万円の申告洩れで調査終了と思っていたので、正直調査官の言葉にとま
どった。
調査2日目の朝10時、今回は正直調査官一人でなく、上司の統括官も一緒だった。

正直調査官 「こちらは統括の上積です。もう少し調査したいので、よろしくお願いします。」

古武良税理士は先日の問題の預金の入出金について6,000万円については申告済で、9,000万円は
申告洩れだった旨を調査官へ説明した。

正直調査官 「この件はよく判りました。実は今日伺ったのはあと5千万円の申告洩れがあると思いま
         すが。」
古武良税理士 「エッ、まだ何かあったのですか?」
正直調査官 「先生、野町証券会社からの資料で、運賀氏の名義で5,000万円の金融商品が出てき          ましたけど、これも故人からの相続財産と思いますが・・・。」
古武良税理士 「運賀さん、この話しはどうですか。証券会社にあと5,000万円の商品ありますか?」
運賀良三氏 「・・・正直さん、今度の件は古武良先生にすべてまかせてありますので、先生と相談し
         たいのですけど、よろしいですか。」
正直調査官 「いいですよ。古武良先生とよく相談してから連絡して下さい。それでは先生よろしく。
          」
こう言い残して正直調査官と上積統括官は今回は1時間もたたずに帰って行った。

古武良税理士 「さて、運賀さん、今の件はどうですか?まだ野町証券に5,000万円ありますか?」
運賀良三氏 「先生、実は私の父が7年前に亡くなりまして、この時に5,000万円相続した預金を野町         証券へ預けましたが、これも伯父さんからの相続になるのですか?」
古武良税理士 「運賀さん、この5,000万円がお父さんから相続したのであれば、今回の伯父さん
           からの相続財産には含まれませんけど、7年前に相続した証拠とか何かありま
           せんか。その当時の証券会社からの預り証とかがあればいいのですが。」
運賀良三氏 「それなら確かあったと思います。」

そう言いながら別室に消えた運賀氏はほどなく証券会社からの預り証を持って現われた。

古武良税理士 「これなら問題ないですよ。ただこれは7年前から継続してますね。」
運賀良三氏 「ハイ、7年前から動かしてません。配当はいつも現金でもらってますけど。」

この預り証があったので、この5,000万円の金融商品は伯父からの相続財産には含まれなかった。
その結果、運賀良三氏のは9,000万円の申告洩れで修正申告を提出して結着した。
運賀良三氏は書類を捨てずに保管していたので、必要以上の税金を支払わずに済んだ。
今回のような事等で、相続財産が相続人固有の財産かどうか、微妙な問題なので、当時の通帳と
か証拠資料は紛失しないように注意しておくことが肝要である。
自分の親は財産がないから、相続税には関係がないとは思わずに、ひょんな事で思わぬ財産を手にする場合もあるのでいろいろな書類は保管すべきだろう。

古武良税理士の独り言  「それにしても運がいい人で、またこまかい性格な人だったのでめでたし
                 で終って良かった。」












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